人生半ばの童貞

36年のクソ人生を考える

或る「小倉日記」伝

松本清張作。

この小説はとても好きな短編小説である。

文体も簡潔で好き。

簡単に書くと、生きる意義の話である。

主人公は、紛失した森鴎外の小倉時代3年間の日記の復元をする研究をする。

主人公は不具な体のため、自身の人生の誇りと目的をその研究に求める。

しかし、3年間の日記の復元をするという研究に人生をかける意義があるのか。主人公は悩みながら研究を進めるが、挫折して死ぬ。

私の頭の中で浮かぶ主人公の悩みながら研究を進める姿に、あがく姿に、貴いものを感じる。

正確には貴いとは違うかもしれない。

信じるに疑わしい自分自身と目的と状況の中でも、なお意思と希望を持つことの美しさと強さと苦しみをこの小説は現していると思うから私はとても好きだ。